ベニヤ板
時期 小学校低学年
場所 学校
思い出したきっかけ 工事現場
昔ながらの一軒家とオフィスが区画ごとに交互に立ち並ぶような街の一角に、私の勤務先はあります。
勤務先のビルの屋上からは昭和と平成と令和が融合したような街並みを見ることができ、お気に入りの景色のひとつでした。
ですが最近は古い建物を区画ごと壊し、オフィスビルやホテルなどを建てる工事がそこかしこで行われていて、そのうち昭和の景色はなくなってしまうのだろうなと少し寂しくなります。
通勤中にもやはり工事現場の側を通ることがあり、ふと、ある匂いを思い出しました。
私が小学校低学年の頃、生徒の数が増えすぎたためか学校の増築が行われました。
増築される部分のすぐ側の教室だったため、窓の一部は足場やベニヤ板で塞がってしまい、子供心に狭苦しい気持ちを抱いたことを覚えています。
ですが、雨の日は別でした。
もちろん雨の日も窓からの景観が良くなることはありませんでしたが、何故か雨の日はベニヤ板からクリームの匂いがして、その匂いを嗅ぐのがとてもとても大好きだったのです。
おそらく担任の先生からは「変な子……」と思われていたことでしょう。
雨の日は休み時間が来るたびに、ベニヤ板に鼻を押し付けていたのですから。
友達には自慢げに「甘い匂いがするよ!」と触れ回っていましたが、やはり「変な子……」と思われていた気がします。
流石に大人になった今となっては工事現場のベニヤ板に鼻を押しつけることはしませんが、今でも雨の降る日に工事現場を見かけると、あの匂いが蘇る気がしています。